先生や支援者とのコミュニケーション~子どもの困難を“見える化”する工夫
「今年の担任はハズレかも・・・」と思ったことはありませんか?虐待や体罰とまではいかなくても「ああ、もっとこうしてくれればいいのに」と思ってしまう・・・。あんまり細かく言い過ぎると「モンペ(モンスターペアレント)と思われるなぁ」なんて。そんな小さな不安に悶々とすることはないでしょうか。
不安や不満の感情は消すことはできません。けれど、行動は変えられます。ある道具を使って、先生にお子さんの事を伝える方法を工夫してみませんか?
「サポートブック(生活の場面が変わるとき編)」ってなに?
お母さんやお父さんの頭のなかにはお子さんに関する情報(特徴・接し方・支援方法など)がたくさんあります。日々、一番近くで接している保護者だからこそわかることがたくさんあるでしょう。しかし、お子さんのライフステージごとに保育園、幼稚園、学校、学童保育、放課後等デイサービスなど、色々な人がお子さんに関わることになります。そのやりとりの真ん中にいるのが保護者です。

神戸大学の高田哲先生を中心とする神戸市保健福祉局発達障害者支援センターが作った「サポートブック(生活の場面が変わるとき編)」は保護者と先生や支援者に役立つコミュニケーションツールです。お子さんの成長の記録にもなるサポートブックの作り方と使い方をご紹介します。
サポートブックの作り方~書いて!伝えて!ためる!
書く(記録)
・サポートブックを中心的に作成・管理するのは保護者です
・日々の関わりの中で行っている支援(接し方の対応の工夫など)や他の支援者から聞いた支援をメモする形で作っていきます
・頭のなかにあることを記入することで、本人の特性を理解することができ、新しい対応や工夫を考えるきっかけになります

伝える(伝達)
・進学や進級などで新しいステージに進む際に本人に関する情報(特徴、接し方、支援方法など)を新しい支援者に伝えることができます
・新しいステージで本人が安心して楽しく過ごすための大きな助けになります
・サポートブックを使うことで、本人に関する情報を過不足なく支援者に伝えることができます

ためる(保存)
・日々の生活の中で「サポートブック」を作っておくと成長の記録になります
・使わなくなった記録も捨てずに成長の記録としてサポートファイルに加えると情報量が増えます

先生や支援者とのコミュニケーションツールになる
お子さんが就労するまでには、保育園・小学校・中学校・高校など様々なステージが待っています。次のステージに進む際に本人に関する情報を引き継ぐことは、本人が安心して過ごすために役立ちます。
(先生)怒ってパニックになって手がつけられません
(お母さん)先生、具体的にはどういう行動をしていましたか?
大きな声を出して、「くそ!」と言ったり、机を叩いてしまうので他の子が怖がっています
そ・・・そうだったのですか。パニックを起こしていますね。申し訳ありません・・・(色々言いたいけど,ここはひとまず持ち帰るか)
ーーー-帰宅後
パニックの時はどうしてるかなぁ・・・とりあえず書いてみるかぁ・・

えーっと、〈短い時で5分、長いと30分くらいで落ち着く〉かなぁ。あと、変に干渉されると気持ちのおさめようが無くなるから、〈他人との関係で問題があればそのまま知らん顔していて下さい。過剰に反応すると大きなパニックになることがあります〉っと。
サポートブックがあってよかった~小学校入学時
小学校は初めて集団で学習する場となり、その経験によって本人が大きく成長する機会であす。また、お子さんにとって“初めて”をたくさん経験する場所でもあります。本人の特徴や家庭での支援方法、幼稚園や保育園での対応などの情報を伝えることで、スムーズに小学校生活をスタートできるのではないでしょうか。
「音に対して過敏で大きな音がすると耳をふさいだり、耐えられずにその場から逃げてしまったり、どうしていいのかわからずにパニックになる子がいます」
サポートブックがない場合
「Aくんは入学式当日、みんなと一緒に体育館へ向かいましたが、入場するときの大きな拍手にびっくりしてしまい、パッと走りだしてしまいました。周りにいた友達はびっくりしていました。」
サポートブックがある場合
「Bくんの保護者は、小学校入学に先立ってB君がどんな場面でどんな音を嫌がるのかを書き留めて伝えてくれました。運動会ではピストルの代わりに笛をつかうようにしました。いろいろな人の声や拍手の音に緊張していましたが、我慢できない場合は図書館に行ってもいいことを事前に話し合いました。」
・担任が決まっている時:担任、特別支援教育コーディネーター
・担任がまだ決まっていない時:校長、教頭、特別支援教育コーディネーター
サポートブックがあってよかった~中学校入学時
中学校では教科ごとに担任が変わります。また定期考査があり、教科ごとに試験をするのも特徴です。より複雑な学習を身につけ、友達とのコミュニケーションスキルを学習していくことになります。思春期を迎えて心身ともに大きく変化する時期でもあります。
それまでの本人の特徴や家庭での対応、小学校での支援等の情報を伝えることで本人にとって過ごしやすい環境作りができるのではないでしょうか。
「友達とのコミュニケーションをとるのが苦手で、一方的にしゃべってしまったり、また、相手の都合を考えることが難しく、自分中心になってしまう生徒がいます
サポートブックがない場合
「Cくんは休み時間、先生の目の行き届かないところでトラブルになりました。友達に一方的に話しをしてしまったため、言われたくない言葉を友達から言われて教室に入れなくなってしまいました。」
サポートブックがある場合
「D君は自分の意見を一方的にしゃべってしまうため小学校では話し合い活動の場でトラブルになることが多かったことを事前に教えてくれました。なので、中学でも同じことを繰り返さない工夫を考えているところです。トラブルなるということは本人もどうしたらいいのかわからず困っているということなので、これまでの様子を教えてもらえると助かります。」
・担任が決まっている時:担任、学年主任、特別支援教育コーディネーター
・担任がまだ決まっていない時:校長、教頭、特別支援教育コーディネーター
サポートブックがあってよかった~高等学校入学時
高等学校は全日制、定時制、通信制などがあります。さらに、専門的な教科を中心とする専門学科もあるので教育の内容も特色をもっています。また、集団生活ではより高いコミュニケーション能力が求められます。
小中学校で引き継がれてきた取り組みの経緯を家庭と高等学校が共有することで、将来の進路に際して具体的な支援策を作る糸口がつかめます。それを素に進学先や就労先、関係機関との連携を円滑に進めていくこともできます。
「友達と仲良くしたいという気持ちはありますが、仲間関係がうまく築けないために友達とトラブルを起こしてしまう生徒がいます」
サポートブックがない場合
「Eくんは入学後のオリエンテーションの時に自己紹介を行うことになりました。自分の番が来たE君は生まれてから高校に入るまでの細かい内容まで説明しようとしたのでクラスメイトから「なげーよ」とやじを飛ばさて、怒ったEくんが喧嘩をはじめてしまいました。」
サポートブックがある場合
「Fくんの保護者は合格発表後にこれまでの学校生活で気をつけていた事柄や本人の特徴をファイルにまとめて学年主任と私に伝えてくれました。なので、入学後のオリエンテーションでは「自己紹介表」を全員にくばって自己紹介の項目を予め決めました。最初が肝心ですね。」
・担任が決まっている時:担任、学年主任、特別支援教育コーディネーター、養護教諭
・担任がまだ決まっていない時:学年主任、特別支援教育コーディネーター、養護教諭
いつかくる「親なき後」へ・・・
多くの場合はサポートブックに書くまでもなく、お子さんについての情報は保護者の頭のなかにあると思います。しかし、頭のなかにある情報は他の人が見ることができません。最初はメモでも、ノートでも、Twitterでも、Facebookでも、ブログでも、書き方はなんでもいいと思います。お子さんについて「◯◯なときは、△△すれば□□できる」という情報を新しく出会う人に知ってもらうことで、お子さんが生きやすい場所が広がります。
いつか情報のバトンをほかの人に渡す日が来ます。無理なく続けられる方法で、まずは書いてみてください!
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・よくわかる発達障害者支援法
・神戸市サポートブック作成委員会、神戸市保健福祉局発達障害者支援センター(2014)『サポートブックの作り方・使い方ガイド(幼児・低学年用)』
・神戸市サポートブック作成委員会、神戸市保健福祉局発達障害者支援センター(2014)『サポートブックの作り方・使い方ガイド(生活の場面が変わるとき編)』
・立石美津子(2014)『はずれ先生にあたったときに読む本』青春出版社
・戸部けいこ(2002)『光とともに・・・』秋田書店




