発達障害とは? ~発達障害の定義・原因・種類・症状・相談窓口まとめ
「発達障害」という言葉はメディアでも取り上げられ、一般に知られるようになりました。
全国の公立小・中学校の児童生徒を対象にした調査によれば、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒」の割合は6.5%で、1クラスを40人とすると、うち2~3人は特別な配慮や支援が必要なことがあきらかになっています。
こんなに身近な存在になった発達障害には、いろいろな種類や特徴があることをご存じでしょうか。
法律に記載されている発達障害の定義や、発達障害の原因、種類、症状、そして相談窓口についてご説明します。
発達障害とは?
発達障害とは、脳機能の発達が関係する障害です。
自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥・多動性障害など、その症状はさまざまです。
他人との関係づくりやコミュニケーションが苦手な場合もありますが、優れた能力が発揮されている場合もあります。
年齢や環境に応じて目立つ症状は変動するため、発達障害か否かを白と黒で分けることが難しく、広大なグレーゾーンがある障害とも言われています。
発達障害の定義
近年、発達障害に注目が集まった理由には2005年に施行された「発達障害者支援法」という法律が関係しています。
それまでは知的障害を伴う発達障害者への支援は行われていましたが、この法律によって知的な障害を伴わない発達障害への支援が定められました。
発達障害者支援法における「発達障害」の定義は以下の通りです。
第一章 総則 (定義)
第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
3 この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう。
つまり、発達障害児・者とは幼いときから現れる脳機能の障害や特性によって、日常生活に困難を抱えている人のことをさします。
そして、発達障害児・者の抱える困難を克服するための医療や福祉や教育を定めたのが「発達障害者支援法」なのです。
発達障害の原因
発達障害の原因は詳しくわかっていないことが多くあります。
今のところ、先天的な発達の特性については、遺伝的な要因が影響している脳の器質的、機能的な障害によるものではないかと考えられています。
発達障害の発現メカニズムや医学的対処法の研究が国内外で進んでおり、治療薬の開発も進んでいますが、発達障害の原因は十分には解明されていません。
発達障害児の臨床医として全国的に有名な杉山登志郎医師(あいち小児保健医療総合センター)の著書『発達障害のいま』によれば、狭い意味での発達障害とは「発達凸凹(デコボコ)に適応障害が加算されたグループ」を指し、発達凸凹とは「認知に高い峰と低い谷の両者をもつ子どもと大人である」と書かれています。
このことを式で表すならば次のようになります。
環境要因によって引き起こる適応障害の要素も加わるため、発達障害の発現を防ぐことや、医療によって完全に治すことは困難といわれています。
発達障害は誤解をされやすい



人間は、時代背景、その国の文化、社会状況、家庭環境、教育など、自分の取り巻く環境に影響を受けながら一生かけて発達していきます。
発達障害のある人も同様に年齢とともに成長していく部分もあり、成長や変化がない障害とは断定できません。
「障害だから治らない」という先入観は成長の可能性を狭めてしまいます。
また、発達障害はひとつの個性だから配慮は必要がないと考えるのも行き過ぎです。
成人になった発達障害者から「小さいころから配慮が受けられず困難な環境の中で苦労して成長した」という話も多く耳にします。
誰にでも発達の仕方には生まれつき凸凹がありますが、凸凹によって生活に困難を抱えている状態を発達障害といいます。
周囲が理解してサポートすることで環境になじんでいくことができます。
では、発達障害とはどんな障害なのか、その種類と特徴を見ていきましょう。
発達障害の種類と症状
発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害などさまざまなものがあります。
複数のタイプの発達障害を抱えていることもあり、個人差が大きいことも特徴です。

広汎性発達障害
広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders 通称:PDD)とは、自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害をふくむ総称です。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder 通称:ASD)とは、自閉症性障害(自閉症)・アスペルガー症候群・特定不能の広汎性発達障害など、自閉症の特性を重度から軽度まで示す一群をさします。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性としては、「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」という3つの特性があります。
自閉症性障害(自閉症)
自閉症はは広い意味での「自閉症スペクトラム(ASD)」に含まれる一つのタイプです。
「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」に加えて「言葉の発達の遅れ」などの特徴をもつ障害です。
アスペルガー症候群(AS)
アスペルガー症候群(Asperger Syndrome 通称:AS)は広い意味での「自閉症スペクトラム(ASD)」に含まれるひとつのタイプです。
自閉症のように、幼児期に言葉の発達の遅れがないため、障害があることがわかりにくいのですが、成長とともに不器用さがはっきりすることが特徴です。
■もっと詳しく知りたい人はこちら↓↓
・アスペルガー症候群のある子を理解して育てる~症状・特徴・療育・相談機関について
レット障害
おもに女児に発症し、乳児期早期から筋緊張低下、自閉傾向、その後、乳児期後期に四つ這いなどのロコモーションの障害、重度の知的障害が出現します。
小児期崩壊性障害
2年間の正常発達の後に、知的機能、社会機能、言語機能の崩壊がみられる障害です。
通常2~5歳で言語能力の退行がみられ、この退行が6ヶ月程度で終わり、自閉症と類似の症状を示すようになります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠陥多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder:通称ADHD)のある人には2つの特性があります。
両方の特性を併せ持つ人もいれば、どちらかの特性が強い人もいます。
不注意優勢型
忘れ物が多い、注意を持続させることが困難、整理整頓が困難など。
多動性ー衝動性優勢型
じっとしていることが難しく、刺激に対して衝動的に行動をする。
混合型
上記の2つの特性が重なっている。
■もっと詳しく知りたい人はこちら↓↓
・ADHD(注意欠陥・多動性障害)の子を理解して育てる~症状・特徴・療育・相談機関について
学習障害(LD)
学習障害(Learning Disabilities 通称:LD)とは、全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力を要する学習が難しい状態をさします。
識字障害 / ディスレクシア(dyslexia)
識字障害は字を読むことに困難がある障害です。難読症、識字障害、読字障害と呼ぶこともあります。
「文字の読み方の認識が難しい」音韻処理の不全の場合と「文字の形の認識が難しい」視覚情報処理の不全の場合とがあります。
書字表出障害 / ディスグラフィア(Dysgraphia)
書字表出障害は書くことに困難のある障害です。書字障害と呼ぶこともあります。
「書き文字がマスや行から大きくはみ出してしまう」「年相応の漢字を書くことができない」「文字を書く際に余分に線や点を書いてしまう」などの困難が生じる場合があります。
算数障害 / ディスカリキュア(Dyscalculia)
算数や計算や考えて答えにたどり着くことに困難のある障害です。「簡単な数字や記号を理解しにくい」「数の大きい、小さいがよくわからない」「図形やグラフが理解できない」などの困難が生じる場合があります。
特定不能の学習障害
発達障害の症状には、診断の段階で当てはまる部分があるにもかかわらず、病名をつけるまでの診断基準には満たない場合や、十分な情報がなかったり、矛盾する所見があるためにはっきりとした診断ができなかったものに用いられます。
知的障害との関係
知的障害(Intellectual Disabilities)とは、全般的な知的発達の遅れがあるため、文字を通して学んだ知識を生活に応用することや概念の理解をすることが難しい障害です。
発達障害には、知的障害を合併している場合とそうでない場合があります。
知能指数(IQ)などで測定される知的障害に対し、発達障害はコミュニケーション能力や適応能力で診断されます。
発達障害グレーゾーンってなに?
発達障害は、知的な遅れを伴う場合から知的な遅れのない人まで広い範囲を含んでいます。
知的な遅れがない発達障害者も障害の特性ゆえに困難さを抱えている場合があるため、「障害そのものが軽度」と誤解される可能性を減らすために最近では「軽度発達障害」という言葉はあまり使われなくなりました。
発達障害は明確に「ここからが発達障害だ」と境界線を引くことができない障害です。
広大なグレーゾーンがあり、障害と健常の間はグラデーションでつながっています。
また、いくつかの障害特性を併せ持っている場合もあります。
したがって、障害名と向き合うのではなくその人と向き合い、その人の特性を知ることで「何に困難を抱えている人なのか?」「どうすれば解決できるのか」を知ることができます。
・沖田☓華 君影草(2016)『はざまのコドモ』ぶんか社
発達障害かも?と思ったら

「もしかして、うちの子って発達障害かも?」と思ったら、発達障害のお子さんの教育・福祉・放課後等デイサービスに関する情報サイト『発達障がい情報室』をご活用ください。
相談できる窓口まとめ
お子さんの発達について気になることがある場合、行政などの窓口に相談することができます。
育児の相談から障害に関する相談、障害児の親の会が運営する電話相談など、さまざまな相談窓口があります。
制度や福祉サービスまとめ
発達障害のあるお子さんの育ちを支える制度や福祉サービスについて、情報をわかりやすくまとめています。
教育や学びに関するまとめ
お子さんの教育に関して役立つ情報をまとめています。
発達に凸凹のあるお子さんが、自分に合った教育や学びをみつけるためにお役立てください。
・自分にあった学び方を選ばせて!~学校教育へのデジタル教材導入をめぐって
・先生や支援者とのコミュニケーション~子どもの困難を“見える化”する工夫
・”参加”と”排除”について考える~公立学校の発達障害に関する意識調査から
当事者や家族の書いた本・漫画・映画
障害のある当事者や家族が書いた本・漫画には生きた知恵がたくさん詰まっています。
映画の中にも、良いものがたくさんあります。ぜひご覧になってください。
・健常と障害の『はざまのコドモ』
・コミュ障親子の奮闘記『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』
・発達障害オススメ映画7本~笑えるものからシリアスなものまで!
この記事では制度・法律の名称について正しく記載するために「障がい」ではなく「障害」と記載しています。
《この記事の参考にさせてもらった資料》
・杉山登志郎(2011)『発達障害のいま』講談社現代新書
・長谷川敦弥, 野口晃菜(2016)『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』株式会社SBクリエイティブ
・発達障害者支援法
・発達障害情報・支援センター「発達障害を理解する」
・政府広報オンライン「発達障害って、なんだろう?」
・文部科学省「特別支援教育について」
・文部科学「平成24年通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」





